「週刊ポスト」 2001.6.8号に掲載された署名記事。
掲載時に頁数の都合によってカットせざるをえなかった部分を復活したオリジナル・テクストです。
5月19日の一部朝刊は、長野県で国内初の代理出産が行なわれたことをセンセーショナルに報じた。子宮を摘出した姉に代わって、体外受精した姉夫婦の受精卵を妹の子宮で着床、出産した事実に対して、各紙の姿勢は概ね批判的だった。しかし、記事は、旧厚生省が出した”代理懐胎禁止”の答申を挙げこそすれ、患者を取り巻く内情については一切触れていない。患者、そして医師が決断した背景には、報道からはうかがい知れない苦悩と願いがある――。
「実は、体外受精による代理出産(※1)を、手がけている」
長野県の諏訪マタニティークリニックの根津八紘(やひろ)院長(59)から、そう打ち明けられたのは、今から約1年前のことだった。驚かなかったといえば嘘だが、根津院長は、6年前から、「子宮を失った女性が子供を授かるには、代理出産による他はない」と公然と主張し続けており、「予告」通りの行動ともいえた。根津院長は、私にこう続けた。
「無事出産に至り、患者さんが落ち着いたら、世間に広く問題提起するためにもきちんと公表する。それまでは、患者さんの心身への影響を考えて、書くのは待って欲しい」
根津院長は、86年に国内で初めて減胎手術(※2)を行なったことを発表。また、98年6月には、日本産科婦人科学会が会告で禁じていた非配偶者間体外受精(※3)を実施し、これを公表して学会を除名され、物議を醸した。そうした経緯を考えると、代理出産についても、時期がくれば公表するに違いない、と思われた。私は根津院長の意向を尊重し、この「スクープ」を報じることを、今まで控えてきた。
私だけではない。NHK、信濃毎日新聞、SBC(信越放送)等も、この情報をつかんでいながら、患者への配慮から、時期がくるまで報道を慎んできたという。
これは、メディアとして当然の姿勢であろう。犯罪事件報道ならばともかく、代理出産は現行法上、違法行為ではないし、妊娠・出産は個人のプライバシーに関わる。特に不妊症の患者は、その事実に触れられるだけで、精神的に深く傷つく場合もある。報道に際しては、慎重を期す必要があり、そうでなければ、報道に名を借りた人権侵害となる。
だが、朝日新聞だけは違った。根津院長の意向をくむことなく、5月19日朝刊1面トップで「『代理母』国内で出産」とスッパ抜き、2日間にわたり、1面、社会面、さらには社説でも、「ルール破り」「問題点を見据えたのか」などと、執拗に批判を浴びせた。現行法で禁じられているわけではない代理出産という行為そのものが、あたかも犯罪行為であり、根津院長はまるで犯罪幇助(ほうじょ)を行なったかのような書き方だった。
「こんな形でオープンになってしまったので、代理出産した方への影響が心配でした」
と、根津院長は語る。
「子供を産んで、まだ日も浅い。産後の疲労感が残っているでしょうし、姉夫婦も赤ちゃんの育児に追われている。関係者みんなが、まだ落ち着きを取り戻していない。こういう時期にマスコミに騒がれるのは、心身への影響が大きすぎるので、避けたかったのですが、情報をつかんだのが一番遅かった朝日の記者が、5月18日夜に私のところへ来て、一方的に『翌日の紙面で書く』と通告してきた。『患者のことを考え、もう少し待ってほしい』という私の言葉に耳を貸そうとはしませんでした。結局、朝日の動きを察知して、一部他紙も追随し、19日の朝刊に出たのです。
案の定というべきか、朝日の紙面は、代理出産否定一色でした。普通の報道であれば、識者のコメントなども、賛否両論を併記するものでしょう。ところが、代理出産を容認する識者のコメントも、子宮の欠陥による不妊症でつらい思いをしている患者さんの声も取り上げていない。
他の新聞も同様で、産経などは、社説で、法的根拠もないのに、『医師免許取り消しもやむを得まい』と書いていました。
私は、医師免許を剥奪されなければならないような違法行為は行なっていない。旧厚生省の専門委員会は、昨年12月に『代理懐胎(代理母・借り腹)は禁止する』という報告書をまとめていますが、まだ法制化されたわけではないし、法制化されるとも限らない。現段階では、3年以内に法案を国会に提出する予定があるだけです。
また、日本産科婦人科学会(日産婦)は会告で代理懐胎の禁止を定めていますが、日産婦はあくまで、任意団体に過ぎず、会告に法的拘束力などない。しかも、私は日産婦から除名されている身ですから、会告に縛られる理由はまったくありません。
何ら違法行為を行なっていない医師に対して、「医師免許を取り消せ」と、法的根拠もなく書く産経新聞の社説は、魔女狩り以外の何ものでもありません。
私への中傷はともかく、一連の報道で憤りを覚えたのは、不妊で苦しむ女性に対して一片の思いやりすら示されていないことです。代理出産という生殖医療の良し悪しを、冷静に科学的に論じるのはかまわない。反対意見があったっていい。しかし、治療技術について論じるにしても、まずは第一に、患者の立場に立って考えるべきでしょう。」
根津院長は唇をかみしえ、こう続ける。
「不妊症の女性は、昔は『石女(うまずめ)』などと呼ばれて、ひどい差別を受けてきました。男性の側に不妊原因があっても、かつてはすべて女性のせいにされて、苦しめられてきたのです。医療の発達によって、不妊のメカニズムがわかり、治療方法も進歩してきた今でも、まだ差別が完全に消えたわけではありません。今回のようなバッシング報道は、不妊症の女性を傷つけるだけでなく、差別を再び助長することになりかねません。その点を、私は非常に危惧します。
『法整備を急げ』と、どの新聞も書いていますが、産もうとする女性と、生まれてくる子どもの権利を擁護するための法整備ならば、私も大いに歓迎します。たとえば子どもに対する養育義務を放棄する父親に、義務を履行させるような法律は必要です。しかし、不妊症の女性の希望を奪い、産ませないようにするための法整備ならば、私は反対です。
原則的に、生殖に国家が介入すべきではない。生命倫理の美名のもとに、生殖に対する国家統制を強化しようとする旧厚生省の専門医の見解や、それを支持する新聞の論調は、基本的人権を侵害する論理です。ハンセン病患者に対して、強制的な断種・中絶が、国家権力によって強制されてきた歴史を忘れてはいけません。これも公衆衛生や民族浄化などという、’美名’のもとに行なわれてきたのです。
もし仮に、旧厚生省の答申通りに代理母・代理出産を禁止する法律が可決されたなら、憲法の定める基本的人権の侵害であるとみなし、私は違憲訴訟を起こすつもりです」
新聞報道の中には、根津院長が行なった配偶者間体外受精代理出産を、米国における商業化された代理母(非配偶者間体外受精=サロゲートマザー)ビジネスと同列に並べ、混同して扱っている記事も散見された。この点も、根津院長は「勉強不足による誤解か、意図的な曲解である」と反論する。
「日本にも、米国で代理母を斡旋している業者がいますが、費用は約1000万円もかかります。私が今回実施した例では、30万円強しかかかっていません。もし日本国内で代理出産を禁止する法律が成立しても、どうしても子どもがほしい人は、米国へ行くでしょう。でも、それはお金持ちに限られる。豊かでない人は、生殖医療技術の恩恵にあずかれない。これでは貧富の差による差別を産むだけです。
私はもともと生殖医療の商業化に反対です。精子や卵子の売買も許されないと考えていますし、代理出産についても、あくまでボランティアでなくてはならない、と考えており、独自にガイドラインも作成しています」
根津院長の定めるガイドラインでは、第1に依頼者は子宮のない女性に限ること、第2に自分の子宮を貸して代理出産を行なう女性は、すでに子どものいる既婚者に限り、生まれた子どもに対していかなる権利も主張しない旨、誓約書にサインすること、第3に、依頼側の夫婦と、請け負う側の夫婦は、身内に限り、4人一緒に来院して、根津院長の事前説明を受けること、第4に出産後、ただちに子どもを依頼側夫婦に引き渡して養子縁組をすること、などとされている。
「もちろん、いくらガイドラインを定めても、最悪の場合、両夫婦とも気が変わり、誰も子どもを引き取ろうとしないこともありえます。その場合は、わたし自身が引き取って養子にする覚悟です。家内にも、『頼むぞ』と前々からいってあります。家内の反応? 『こんな亭主と一緒になったのが因果だから、仕方がない』といってますよ(笑)」
根津院長のもとに、代理出産を依頼してくる方は、どんな心情を抱えているのだろうか。それを知る手がかりとなる手紙がある。今回、姉夫婦の子どもを出産した大川栄子さん(仮名)が、したためた手紙である。このたび、根津院長を通じて、公開の許可を得た。一読すれば、当事者の切実な心情が手に取るようにおわかりいただけると思う。
<私は大川栄子といいます。(中略)私には、○才上の姉がおりますが、結婚し、7年目にして平成○年○月にやっとさずかった子を出産する予定でした。それが、もうすぐ10ヶ月目に入るところで出血し、(中略)子宮の摘出を受けました。姉は元気になりましたが、子どもを亡くした悲しみは、私の子どもを抱くことができないほど大っきなものです。(中略)そうしていたら、新聞に(載っていた根津院長の)”借り腹”要望に対応、という言葉に、どうしても先生にお話を、お願いをしたく、手紙を書きました。
先生の患者さんの中に私たちもいれてください。(中略)私たちは、社会が少子化を取りあげるより先に、子供をたくさん産みたくても産むことのできない人々のための法をなぜかえないのかと、手も足もだすことのできない悲しみでいっぱいでした。先生が神様のように天使のように思えてなりません。私たちには、小さな、でもとっても強い光がみえてきたように思えます。
先生、頑張ってください。私たちを助けてください。家族で心の底から幸せの笑いをとりもどしたいのです。(中略)私に姉夫婦の子供を産ませてください。先生にはけっしてご迷惑をおかけしません。借り腹をして子供をさずかって、誰に迷惑をかけるというのでしょうか。そこには幸せな家族の思い、そして手をかしてあげられた幸せな私の思いがあるだけです。言葉にしてはうまく伝えられませんが、先生、日本中の悩みを持った女性のため、明るい21世紀を迎えさせて下さい。
手術のうけられる日をお腹をあけて、健康なからだでまっています。ぜひよろしくお願い致します。>この手紙の重要な点は、子宮のない女性が誰かに産んでもらいたいと依願しているのではなく、産めない姉に代わって妹である自分が産みたいと、代理出産を自ら志願している点である。
「この心のこもったお便りをいただいた時、姉を思う妹さんの気持ちに胸を打たれました。人のために尽くしたいという気持ちで医者になったのですから、こういう御依頼をやりすごしては、自分が医者になった意味がないと思い、さっそく連絡を取りました」
依頼があった後、患者らへの充分な事前説明を行なわなかったかのように報じた新聞もあった。たとえば朝日新聞は「(根津医師は)患者への説明時間を問われると、『15分』と言ったり、『30分』と言ったり。どんな説明をしたかの記録も残していないという」などと、終始否定的なトーンで報じた。
だが根津院長は、「インフォームド・コンセントは、充分に行なった」と語る。
「体外受精代理出産を行なった5組のケースすべてに対して、事前説明を行なっています。平日だとゆっくり時間がとれないので、休診日の日曜日に、子宮のない女性とその夫、代理出産する女性とその夫の4人一緒に来院してもらい、関係者全員が同意しているのかどうか、まず確かめます。そのうえで、妊娠出産のリスクと体外受精のリスクを説明し、それを承知の上で、代理出産を志願した女性に対し、本当に引き受ける覚悟があるのか、念を押しました」
日産婦の荒木功会長は、5月19日付産経新聞夕刊で、
「(患者の)要望があれば、倫理に従わずなんでもやるというのは医師の態度ではない」
などとコメントしている。だが、根津院長は、代理出産の依頼をすべて引き受けてきたわけではないと反論する。
「代理出産の依頼は、今まで20組ありましたが、15組はお断りしています。断った理由は様々です。
はじめて代理出産を打診されたのは、6年前でした。その方は、ロキタンスキー症候群(※4)のため、先天的に子宮のない20代の独身女性の方でした。
この時私は、体外受精にこれから取り組むという段階で、彼女の希望に応じられる用意は、できていませんでした。ただ、いずれは子宮に欠損のある女性のために、体外受精による代理出産は手がけなければなくなるな、と本気で考え始めるきっかけになりました。
子宮に問題はないが、心臓などに疾病を抱えているので、誰かに代理出産してもらいたいという方もいましたが、私は代理母の斡旋は行なわないし、この方は自分の子宮で出産する可能性が残されているのでお断りしました。
また、50代の母親が、子宮全摘手術を受けた娘に代わって産みたいと志願して来られたこともありましたが、高齢で出産リスクが高いため、あきらめてもらいました。
英国では、54歳のビビアン・モーリスさんという女性が子宮癌で子宮を失った娘のローラさんに代わって出産に成功した事例が報告されている。代理母・代理出産が合法とされている英国では、臨床の蓄積があるため、高齢でも可能と判断されたのだろう。
私が依頼を引き受けたのは5例で、3例は受精卵の着床まで至らず、1例は妊娠したものの、流産してしまいました。第1は30代のロキタンスキー症候群の女性で、義妹が不慮の事故で代理出産を引き受けました。
第2は、子宮筋腫のため子宮摘出手術を受けた40代の女性。長男を亡くしており、代理出産を引き受けたのは、義妹です。
第3は、子宮筋腫にて腹式単純子宮全摘手術を受けた40代の方。
第4は、子宮筋腫で子宮を摘出した30代の方で、ホスト・マザーは実妹です。
この4例のうち、受精卵が着床し、妊娠が確認されたのは1例で、あとの方は着床まで至りませんでした。妊娠した方も、流産してしまい、無念に思っています。
報道された成功例は、5番目に実施したケースです。妊娠して臨月まで迎えていたのに、子宮内胎児死亡と、子宮内膜剥離による出血のため、子供をあきらめるだけでなく、子宮を摘出しなければならなかった方でした」
どれほどの数の女性が、子宮の障害等のため、不妊となっているのだろうか。正確な統計は厚生労働省にも存在しないが、都内で、はるねクリニック銀座を開業している中村はるね院長は、「20万人はいるはず」と推測する。
「子宮の2大疾患である子宮筋腫と子宮内膜症は、生殖が可能な年齢の女性2000万〜3000万人のうち、疾患の大小の差はありますが、3人に1人、つまり1000万人が罹患しています。そのうち、不妊治療の必要な方は、少なく見ても約100万人。そして現在の日本の規定の医療ではどんな治療を施しても絶対妊娠できない方は、その5分の1の20万人です。医療が進歩した現在でもこれだけの数の患者がいるわけです」
重度の不妊症患者や、子宮のない女性が、どうしても遺伝的なつながりのある子供を望む場合には、代理出産という道を選択するしかない。
中村院長はまた、根津院長の行動を支持する現場の臨床医は少なくないと語った。
「学会の圧力をはねのけた根津先生は、本当に偉いと思います」
日産婦の元会長で、不妊学会の元理事長でもある生殖医療の権威、飯塚理八・慶應大学名誉教授も、「代理出産を法律で禁止すべきではない」と語る。
「代理出産を禁止した日産婦の会告は、私が会長時代につくらせたもので、その当時は、3年ごとに見直すこととしていた。ところが、後任の会長は怠慢で、会告の見直しを行なわずに今日まできた。根津君が行動を起こすことで現状を変える他はないと思いつめるのも、仕方がない。
そもそも日産婦は、不妊治療の専門医の集団とはいえないので、会員全員が生殖医療について理解しているわけではない。他方、専門医の集団である不妊学会では、92年に発表した会告の中で、会員の45%が代理母・代理出産に賛同しております。(※5)むろん私も、不妊症患者の『産む権利』を奪うような法律制度には反対です」
専門医の間に、根津院長を支持する声があることを、各新聞がほとんど報じなかったことは、報道の公平性という点で疑問が残る。
朝日新聞は、20日付朝刊の1面で、「事後ケア不十分」という見出しのもと、「代理母になった妹夫婦や姉夫婦と根津院長はその後、疎遠になっており、家族関係もぎくしゃくしている」などと断定した記事を掲載している。この記事を読む限りでは、患者は根津院長に対して不信感を抱いて離れていったように受け取れる。しかし、「不十分」なのは、朝日の記者の取材の方であろう。出産後、根津院長あてに送られてきた栄子さんの手紙を読めば、それがよくわかる。
<根津先生お久しぶりです。(中略)あれから1年が経ちました。そして私たちは、最高の宝物を手にすることができました。
少し小さめですが、とても元気な子を無事出産することができました。
当然のことですが、義兄にとてもよく似た子が、私のお腹から産まれてきた瞬間、何とも言いようのない不思議な思いを感じ、母としての愛しさとちがい、やっと大きな仕事を終えたという安堵感で涙が止まりませんでした。
先生、言葉足らずですが、本当にありがとうございました。最近、借り腹出産について芸能ニュースでも報道されることが多く続き、厚生省では3年以内に刑事罰を科して規制していくと聞きました。ほんの少し、本当に少しですが、”ドキッ”としたりすることがあります。人に話をするのに”上手に言わなきゃ”って思ってしまう私がいたりします。
でも、妊娠出産という神秘を私のお腹ですごし、誕生してきた命です。力強く脈を打って生きていこうとしている命が生まれてきたことは、すばらしいことだと信じています。いつの日か、10年20年後でも、必ず国内において、すべての女性が安心して治療を受けられる日がくると信じています。だから私は、いつの日も胸を張っていようと思います。
いま、姉夫婦、家族はとても幸せに笑うことができました。私も何よりこの日を望んでいました。(中略)いつの日か、心からの笑顔で先生にお会いしたいと思います。
根津先生、本当にありがとうございました。言葉ではすべてを伝えることはできませんが、本当にありがとうございました。
心をこめて……>5月22日、尾身幸次科学技術政策担当相は、「こういう問題を『絶対だめ』と決めてよいのか」と、代理出産について、一定の理解を示す発言をした。
「自分の子供が欲しいが産めない人と、協力する人がいて、幸福な結果になる。人間の生き方は千差万別だと思う」
代理出産の是非について、論議はまだまだ、尽くされていない。栄子さんは、根津院長を通じて、こうコメントを寄せた。
「5月19日の朝刊を見て、ショックを受けましたが、今は気を取り直そうとしています。新聞報道に対しては、いいたいことが山ほどありますが、時期を待って反論したいと思います」
「早急にルールを」と声高に叫ぶ前にするべきことは、何よりもまず、痛みを覚えている当事者の声に、謙虚に耳を傾けることではないだろうか。
※1 体外受精による代理出産
妻の卵子を夫の精子と体外受精させて、妻以外の女性の子宮に移植し、代わりに出産してもらう方法(ホスト・マザー)。夫の精子を妻以外の女性の子宮に注入する代理母(サロゲート・マザー)とは異なり、子宮に障害がある女性でも、自分と遺伝的なつながりのある子供を授かることができる
※2 減胎手術
4つ子や5つ子などを妊娠した場合、そのままでは母胎と子供の双方にリスクがかかるため、母体内で一部の胎児を中絶する手術。根津院長は、86年に国内で初めてこの手術を実施したが、当時、日本母性保護産婦人科医会は公認していなかったため、論議を呼んだ
※3 非配偶者間体外受精
妻の卵巣に障害があるとき、妻以外の女性から卵子の提供を受け、夫の精子と受精させてから妻の子宮に入れる生殖医療技術。98年6月、根津院長は「体外受精は夫婦間に限る」としてきた日産婦の会告に反して実施を公表したため、学会から除名された
※4 ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群
膣欠損症の一種。子宮の発育が不完全であり、膣が全くないという先天性の障害。卵巣と卵管は正常で、卵巣機能に異常はないため、卵子を採取して体外受精を行ない、代理出産すれば遺伝的につながった子供をもてる
※5 平成13年5月に飯塚理八氏が学会へ提出した文書より
「基本的には公序良俗に反しない限り、規則を作ってしばる必要はない。医師法に則り相互の信頼関係の下に医療は実施されるべきであり、大方もこのように推移している(中略)2.ホストマザーを禁じる理由は、親子関係の法が本邦では決まらないというのであれば、養子法などを確立する方向に行くべきで、現に法律家からもそのような趣旨を何回も聞いたことがある。明治時代作成の法律に縛られる必要はないし、この機会に改正に踏みきるべきである。本邦でできないので、隣国や他国へ渡航してホストマザーを捜している現況を如何みられるや、平成4年度の日本不妊学会での会告を差し添えたい。当時においてホストマザーには45%の賛同意見があった。日産婦でも全会員とはいわないが、少なくとも代議員諸公よりのアンケートをとるべきかと愚考する。(略)」