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「週刊ポスト」 1999.Oct. 22

「ザ・売春営業」

大手生保レディが衝撃の内幕暴露!


 国内生保の経営悪化のツケは、一線で働く生保レディに。上司から”マインド・コントロール”された彼女たちは、ノルマ達成のために自腹を切って架空契約を結んでいる。
 さらに信じがたいことに、契約をもらうために上司や顧客とのSEXは日常茶飯事だというのだ。
「罪悪感があったのは最初の時だけでした」といってのける生保レディたち。
 生保業界の呆れた実態にメスを入れる----。


「女の武器を使いなさい」


「もうやめたいんですよ、この仕事」
 国内大手のN生命で働く現役生保レディの上野洋子さん(仮名・33)は、浮かぬ顔でそうつぶやいた。
「この間、ある男性のお客さんが、契約の直前に『やっぱりやめる』といい出したんです。仕方がなくて、私の方からホテルに誘いました……
 こうでもしないと、新規契約は全然取れないんですよ」」
 人妻の上野さんには2人の子供もいる。入社して2年。体を引き換えに契約を取ったのは、これで5件目という。
「私の支部では、体で営業している女性は2割、灰色が2割、まったくの『シロ』は6割だといわれています。でも私も同僚からは『シロ』だと思われているんですよ。ですから、『クロ』の人は、2割より多いかもしれない……」
 生保レディには、売春まがいの営業をしている女性が少なくないという。特にここ数年は不況のために、そうした女性が増えていると、現場の生保レディたちは証言する。
「生保レディの営業ノルマは、ものすごくきついんです。だから契約を取るために、お客さんとホテルへ行く生保レディは少なくない。女性の上司から『女の武器を使ってでも、契約を取ってきなさいよ』と叱られていた同僚もいました。私ですか?強要される前に、やってましたから」
 3年前までN生命で外務員をしていた藤村あゆみさん(仮名・33)は、そういって苦笑した。
「私が働いていたのは1年半。その間に、契約を取るために寝たお客さんの数は、30人ぐらいかな」
 藤村さんは、結婚10年目。2児の母親でもある。1歳年上のご主人は、彼女が体を張って営業していたことを、もちろん知らない。
「23歳で結婚するまで、おつきあいした男子は2人だけ。かなり固い方でした。でもN生命に入って、人生観が完全に狂っちゃいましたね。
 最初は、自分が担当していた営業先の会社の社員で、2歳年下の独身の方でした。向こうから『飲みに行かない?』と誘われたんです。で、飲みに行ったあとホテルへ……。入社して3か月目でした。
 浮気の経験もなかったし、すごい罪悪感がありましたが、その時、その男性の保険契約が取れたんです。それで、ああ、こういうものなのか、と」
 一度、タブーを破ってしまったら、あと歯止めがきかなかったと、彼女はいう。
「独身の若い男性がお客さんの場合、、できるだけ相手の自宅にうかがうんです。その時にわざと胸のあいた服やミニを着て挑発する。保険の説明をしている間に、たいがいの人は迫ってきますよ。
 そこで、『ダメですよ』と抵抗する素振りをしてキスまで許し、『じゃ、保険に入ってくれる?』って確認を取るんです。皆、勢いがついているから、『ノー』とはいわないですよ。
 それで最後までいったあと、わざと泣くんです。『どうしよう、夫も子供もいるのに……』って。ほとんどの人は、私を独身だと思ってますから、真っ青になるでしょ。そこで契約書を取り出すと、100%契約は取れます(笑い)」
 したたかさに、舌を巻く。と同時に、こうまでしなければ契約が取れないほど、生保の第一線の外務員は追いつめられているのかと、改めて驚きを覚える。
 バブル崩壊後、国内生保各社の経営は悪化の一途をたどっている。97年4月には日産生命が、今年の6月には東邦生命が経営破綻に陥った。現在、生き残っている生保も決して安泰ではない。国内大手18社のうち17社は、新規の契約高が前年比マイナスを記録している。
 新規の契約が取れないばかりではない。不況の影響を受けて解約も相次いでおり、さらには超低金利のために、運用利回りが予定利率を下回る逆ザヤの追い打ちが、ダメ押しで加わる。98年度の1年間だけで、日本生命は3600億円、第一生命は2400億円、住友生命2300億円、明治生命1500億円と、大手4社の逆ザヤ学は、1兆円近くにものぼる。
 業績を順調に伸ばしているカタカナ生保とは対照的に、既存の国内生保はお先真っ暗の状態にあるのだ。そして、そうした業績不振のツケは、最も立場の弱い女性外務員に皺寄せされるのである。


女性外務員は使い捨ての駒


「外務員で『自爆』していない人なんて、一人もいませんよ」と、D生命で内勤の事務をしていた佐藤亜希さん(仮名・25)は断言する。
 自爆とは、ノルマを達成できない外務員が、他人の名義で契約を作成し、自腹を切って保険料を支払うことをいう。
「私が勤めていた都区内の支部では、月末の〆め切り間際になると、上司から『ノルマが達成できないなら、わかってるでしょ。皆やっていることだから』と、暗に自爆するようにいわれるんです。こんな異常なことが、あたり前のようにまかり通っている。外務員はみんな泣いていましたよ」
 N生命の、東京郊外の支部に勤めている現役生保レディの大田道子さん(仮名・24)の自爆体験談----。
「契約がとれないと、歩合制で働いている生保レディは、1か月に手取り4万円くらいの最低保証給だけになってしまうんです。そのうえ、お客さんに配るテレビガイド雑誌やキャンディなどのノベルティ・グッズは、セールスレディが自腹を切って会社から購入しなければならなくて、お金をもらえるどころか、逆にマイナスになってしまうこともあるんです。
 恥ずかしい話ですが、私もお給料がマイナスになったことがありました。でも、同僚の中には何度も自爆するうちに、自分が払わなければならない毎月の保険料がふくらみ、サラ金に手を出して、会社をクビになった人もいたので、借金だけはしちゃマズイと思ってたんです。それで仕方なく、愛人バンクに登録して援助交際をしていました」
 サラ金のかわりに愛人バンク。どちらにしても無惨な話である。大田さんは愛人バンクから紹介された10数人の客と、1回につき3万から5万円で売春し、損失の穴埋めに回していたという。
「ノルマを達成すると支部長はじめ上司の人にほめられ、朝礼のときに拍手される。逆に達成できないと、支部長に皆の前で怒鳴られ、すごくみじめな思いをするんですよ。そういう思いはしたくないから、つい、愛人バンクにすがってしまったんです。
 とはいっても仕事のために、体を売ることについては、契約を取るためにお客さんとエッチしているので、もう慣れてしまってますけど」
 N生命に入社して4年。無我夢中で働いてきたが、最近になって体を売ることに抵抗がなくなっている自分に気づき、複雑な気分でいるという。
「ふと我に返って考えると、自分はなんてバカなことをしているんだろうって思う。会社にマインド・コントロールされているだけなんじゃないかって、時々思うんです」
 N生命の現役中堅幹部である渡辺芳朗氏(仮名・52)は、大田さんと同じく「マインド・コントロール」という言葉を口にした。
「ウチの場合、大学卒の内勤の正社員と、女性の外務員とでは、扱いにはっきりとした差がある。差別的なカースト制になっているんです。
 女性外務員は、正社員ではない。会社にとっては、使い捨ての駒なんです。彼女たちは、おだてられたり、怒鳴られたりしながら、契約を取らなきゃならないというマインド・コントロールにはまる。
 内勤の男性社員にしてみれば、女性外務員たちをいかに操り、いかに会社に尽くさせるか、そこが腕の見せどころであり、出世の分かれ道になるんです。一番手っ取り早いのは、自分自身がまず手をつけてしまうことですね」
 生保の男性管理職が生保レディを口説くのは、決して「自由恋愛」などではなく、計算ずくの管理業務の一環なのだというのである。
「新しく入ってきた女性に対して、頃合をみて、営業に同行するんです。これを『応援』といいますが、その結果、契約がとれたりすれば、女性は感激するでしょう。そうやっておいて、ホテルに誘うんです」
 女性外務員には人妻が多い。夫を裏切ることに、当然、抵抗があるが、一線を越えてしまうと大胆になるという。
「風俗店では、未経験の女性に対してはじめに店長が『講習』と称して、体で教え込むというでしょう。あれと似てますね。男の欲望に応じれば、得をするんだと、体で教え込んでしまうんですよ。
 それに女性からすれば『自分は支部長に目をかけられている。この人にほめられるために頑張らなきゃ』ということにもなる。私の後輩には、現在約30人いる部下のセールスレディ全員と寝たという現役の支部長もいます」


夫には1億5000万円の保険


 国内大手生保の一角を占めるM生命の、首都圏の某支部で4年間勤めていた古川久美子さん(仮名・38)は、「私はずっと支部長の”愛人”でした」とふり返る。
「入社して4か月目に『応援』してもらい、その後に口説かれて、以後ずっと関係を続けていました。
 他のセールスレディにも手を出しているだろうとは思ってましたけど、私は詮索しませんでした。お客を紹介してもらったり、彼が取ってきた契約を私の契約扱いにしてもらったり、メリットは大いにありましたから」
 彼女も例にもれず、人妻である。子供は2人。
「昔は純情でしたけど、M生命に入って考え方が変わりました。この業界は、モラルなんか、全然ないんですもの。ハンコを偽造して他人名義で勝手に契約書を作る作成契約も横行していたし、本来なら保険には入れない病気持ちのお客さんでも、替え玉受信でパスさせていたし。
 うちの支部なんか、替え玉を支部長自らがやっていたくらいですから。和歌山の毒入りカレー事件の林真須美被告と私たちの差は、人を殺しているかいないかだけで、あとはまったく同じですよ。
 私も女の武器をフルに使いましたよ。私の場合、小金のある年配の人にターゲットをしぼっていました。
 清掃局の所長さんはS生命に入っていたんですが、私の方から誘って、ホテルへ行きました。その所長さんは、S生命に入ったときも、そのセールスレディとセックスしたらしいですけど、体を張ってひっくり返し、1億5000万円の契約を3本取りました。
 ある印刷工場の社長さんの場合、私はその社長さんの奥さんに先に気に入られたんです。その上で社長さんと関係をもって、法人契約と家族の契約を全部取りました。
 奥さんは何も知らないから、『今度、孫が生まれたの。その子の分も入るわね』なんていってくる。奥さんがそういえば、ご主人の社長さんは嫌なんていえない。いえば、私に関係をバラされると思っているから。社長さんは安上がりの『愛人』を手に入れられ、私とM生命は契約が取れ、みんな得をするんです。三方一両得ですよ」
 誰もが得をするという、彼女の話に、決定的に欠けているものがある。彼女の夫の存在である。
「夫なんてどうでもいいんです。私の気持ちは、もう完全に冷え切ってますから。音は給料を運んでくれれば、それだけでいい。死んでくれれば、なおいい(笑い)。夫には1億5000万円の保険をかけているんです。そのお金が入れば、もうお給料をもってきてくれなくても、かまわない----」
 淡々とした口調で彼女が語っている間、私は肌が粟立つのをおさえられなかった。
 前出の渡辺氏は、会社の責任についてこう語る。
「人妻が、体で営業をすることを覚えれば、人生が一変してしまう。亭主にバレて離婚したり、サラ金に手を出して破滅する場合もある。しかし、そうなった時には、管理職の男性社員は知らん顔で、クビを切るだけです。彼らこそ、彼女たちの人生をメチャクチャにした張本人なのに。
 生保で出世して重役になるのは、そうやって女性の心と体をもてあそび、利用価値がなくなればポイ捨てしてきた連中が大半ですよ」
 冒頭に登場した藤村さんは、N生命を退社したあと、現在は性感マッサージ店で働いている。彼女の人生は文字通り、一変してしまった。
「体を売って営業しているうち、馬鹿馬鹿しくなっちゃったんですよ。1回エッチをして、1000万円の保険に入ってもらったとして、私に入るお金はたったの2000円程度なんですよ。これなら風俗で働いた方がマシだわと思って、転職したんです。私と同じように風俗にいった元生保レディは、私の元同僚だけでも4〜5人はいます。それが原因で離婚しちゃった人もいる」
 彼女は今、不眠症に悩まされており、睡眠薬を常用する毎日だという。
「昼はいいんですが、夜になると、不安が襲ってきて眠れないんですよ。夫にバレたらどうしようと思って……」
 彼女のように「転落」してしまった人妻生保レディを、愚かだと批判することはたやすい。しかし、それよりもまず先に批判されるべきは、生保各社の経営姿勢であろう。
 現在、大手生保の経営破綻に対して、公的資金の投入が検討されている。しかしその前に、女性外務員を売春営業や自爆に追い込んで恬(てん)として恥じないような、腐りきった生保の経営体質をまず、徹底的に糺すべきである。モラルハザードが改まらない限り、血税の投入は安易に認めるべきではない。


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