| 作品名 | 南の虹のルーシー |
| 原作名 | Southern Rainbow(1982年)(英) |
| 原作者 | Phillis Piddington(フィリス・ピディングトン) オーストラリア(1910年〜) |
| 訳書名 | 南の虹 |
| 舞台 | オーストラリア・アデレード |
| 物語の年代 | 1937年から約4年間 |
| 主人公 ペットほか |
ルーシーメイ・ポップル(7〜11才) ケイト・ポップル(ルーシーの姉) モッシュ(ハムスター) リトル(ディンゴ(野犬)) |
| 放送期間 | 1982年1月〜12月 |
| 話数 | 全50話(平均視聴率 14.7%) |
| オープニング曲 | 虹になりたい |
| エンディング曲 | 森へおいで |
イギリスで農家を営むポップル一家は、さらに大きな農場を手に入れるため、オーストラリアの移住を決意します。入植が始まったばかりのオーストラリアは、まだ未開の地という表現が当てはまるほど何もない荒野が広がっており、数々の困難を乗り越えねばなりませんでした。
もともと農家として経験豊富な父アーサーは、開拓に慣れない他の開拓者に比べて手際が良く、慣れない地での生活もやがて軌道に乗り始めます。しかし、開拓地での生活費用は予想以上に嵩み、更には人付き合いの要領の悪さも災いして目当ての土地をなかなか手に入れることができません。ついには、お金も底をつきはじめ、新天地での生活にもやがて行き詰まり感が漂います。
そんな苦労をよそに、明るく動物好きの三女ルーシーは、活発な次女ケイトと共に、オーストラリアでの珍しい動物と触れ合いながら、楽しい毎日を送ります。
そんなある日、ルーシーが大地主のプリンストン氏の馬車にひかれてしまう事件をきっかけに、父アーサーはプリンストン氏の計らいで自分たちの農場を手に入れる足掛かりをつかむことになります。入植してから長年の苦労が報われ、母アニーの言う「虹の架け橋の向こう側」についに辿り着くことになったのでした。
アニメ作品中では正確な年月日は出てきませんが、原作では明確に年号が出てきます。物語の初めが1837年で、プリンストン氏の農場が紹介されるエピソードが1840年となっています。
この年代の解説をするまでもなく、オーストラリア入植初期を描いた作品で、入植に関する描写はもちろん、物語に出てくる人々の服装などからも、当時の生活習慣などが伺えます。
名劇年表にも載せましたが、名劇作品で最も古い時代設定になります。ただし、作者自体は現代人なので、時代考証の観点で完璧な描写とはいかないようです。
こんなこと書いては誤解されるかもしれませんが、名作劇場の中で数少ない「名作」ではない作品です。なんと日本のアニメのために書き下ろされた作品です。当時は、コアラにエリマキトカゲと、空前のオーストラリアブーム。ロッテコアラのマーチが発売されたのもこの時期でした。目敏いフジテレビは、そのオーストラリアブームに乗るべく、フローネに続いてオーストラリアが舞台となる作品を用意したのです。 アニメ作品そのものは、オーストラリアをネタにしているためか、いろいろな動物が登場するわざとらしい展開。開拓がなかなかうまくいかない父の苦悩をよそに、ルーシーとケイトの楽しげな生活が目立ちます。後半のルーシーの記憶喪失など無理のある展開や父が飲んだくれになってしまうシーンなど、物語の着地点が見えなくなったのは残念でした。 一方で、原作の方ですが、「名作」ではない分、入手困難な本となっていました。内容はアニメ作品と視点がだいぶ違うというか、オーストラリアの開拓を細かく紹介した作品になっています。ニュージーランドの教会学校では、オーストラリアの開拓時代を勉強するサークルのテキストになっているようで、結果として「名作」として残ったようです。 名劇のお約束とも言える、地理と歴史の勉強については、この作品は五つ星を上げても良いんじゃないでしょうか。オーストラリアが南半球であることや、イギリスから入植したこと、また、入植当時の人々の生活など随所に見られます。
大人の目で見返せば明かですが、完全にオーストラリアブームに則った作品で、物語そのものに何かメッセージ性があったかというと疑問符が付きます。しかし、オーストラリア固有の動物や入植当時の生活の様子などを残すところ無く描いた点については、大変興味深いところです。
最初の数話を見ると、一家みんなが大変明るく、父アーサーもマジメで大変手際が良いため、さっさと農場を手に入れて開拓していくのかと思いますが、物語が進むにつれて一家の生活は一層苦しいものとなり、名劇にありがちな貧しい展開に陥ってしまいます。
主人公はルーシーとケイトの2人ですが、ポップル家は子供5人の大家族なので、それぞれ自分に年齢の近いキャラに感情移入して楽しめることも特徴でしょうか。子供の視点では、動物がたくさん出てくることや、ルーシーやケイトが楽しげに過ごすことに目が移ってしまいがちですが、大人の視点では、思い描くように進まない開拓生活への絶望感を感じることができると思います。子供を持つ年齢になった現在の私にとっては、父・アーサーの立場でついつい観てしまい、明るいルーシーとケイトのコンビの姿を見ながら苦労する父の姿に同情してしまいます。話の前半であれだけ逞しく、頼り甲斐のあったアーサーが、後半で生活に行き詰まって飲んだくれてしまう姿は、名劇としては珍しい描写だと思います。
ほかにも、長女クララの恋愛、結婚や、唯一の男児として頑張るトムの姿など、一家におこる出来事に注目してみると、意外と面白い作品であることがわかると思います。
感想の中で書きましたが、この作品はアニメと同時進行的に執筆されたため、名劇にあって往年の名作ではありません。そのため、日本語翻訳版はもちろん、原語版に至っては、極めて入手が困難な作品になっています。
私は運良く原語版を手に入れることができましたが、ストーリーのある物語というよりは、入植当時の様子を克明に描いた作品と言えるでしょう。挿絵も多いので、英語初心者でも読みやすいと思います。往年の名作ではなくても、大変面白い作品だと思いますので、見掛けた際には是非読んでみてください。
後半のルーシーが記憶喪失になるエピソードは、アニメの完全な創作で、原作では、プリンストン氏の馬にひかれそうになるだけです。この事件でルーシーとプリンストン氏が知り合い、やがて、プリンストン氏が父アーサーの持つ農業の知識や技術を買うというのが、物語後半のエピソードとして描かれています。
英語版原作の入手方法ですが、私はアマゾン(米、英、独)のマーケットプレイスで出てくるのを2年くらい待ちました。尚、カナダ大使館にある図書館には、この本が所蔵されているそうで、借りることができるみたいです。