Spay Operation
(避妊手術)
避妊手術とは? 効果は? 時期は?
出産後の手術は? 妊娠してしまったら...
開腹手術をしない避妊方法
私達はこのように考えています
● 避妊手術とはどういうものなのか、簡単にご説明いたします.
医学的用語では「卵巣子宮摘出術」といいます.
文字通り「子宮」と「卵巣」を摘出する手術です.
子宮だけを取り除いて卵巣を残してしまうと、妊娠はしませんが発情は起こってしまいます.
この手術はごく日常的に行われており簡単なように思われがちのようですが、
全身麻酔をかけ、無菌的な方法で行われる腹部の大きな手術です.
避妊目的の他に、子宮、卵巣の病気やある種の皮膚病の治療等に用いられることもあります.
今ではこの手術の大きな目的は病気の予防であると言えます.
ちなみにオスの場合は「避妊手術」と言わずに、
「去勢手術」と言います.
● 手術をすると、どのような効果が得られるのでしょうか?
発情しなくなり、妊娠できなくなります.
発情は卵巣が関与し、妊娠は子宮が関与しています.
その二つを摘出してしまっていますので、当然発情も妊娠も起こり得ません.
視覚的には、犬の場合通常年に2回発情出血がみられますが、これがなくなります.
(猫にはもともと発情出血はありません)
猫は“季節的多発情”といって、夜が長くなる秋口から春先にかけて、
本人が妊娠している期間を除いて何度でも発情しますが、その発情時特有の行動がみられなくなります.
(「ワォ〜」っと大きな声で鳴いたり、しつこいくらいにすり寄ってきたり)
そして外に自由に出られる子に関しては自然交配してしまう心配が無くなったので、
望まれない子を世に送り出すことを未然に防ぐことができます.
ある種の病気の予防になります.
主に、子宮蓄膿症、卵巣嚢腫、
卵巣腫瘍、乳腺腫瘍など、人間でいう婦人科系の病気の予防になります.
子宮蓄膿症や卵巣腫瘍は、その臓器を取り去ってしまうのでなりようがありません.
乳腺腫瘍は悪性の乳ガンになり得ますが(特に猫や小型犬は悪性腫瘍が多いです)、
これは初回の発情が始まる前、具体的には個体差もありますが生後約6ヶ月以内に避妊手術を受けると、
その発生率が9割方抑えられるというデータがあります.
適切な時期に手術をしてあげれば乳ガンになりにくいというわけです.
ホルモン性の問題行動から解放されます.
(ここでいう問題行動とは飼い主にとって不都合な行動を意味します)
発情時の行動として、メスでも匂い付けのマーキングをすることがあります.
それが見られなくなるということ.
また特に猫では、大きな声で常時うるさく鳴いたり、普段以上に人や物に体をスリスリさせたり
ゴロゴロしたり、落ちつきがなくなったり、また稀に発情期に入ると攻撃性が強くなる子もおりますが、
そういった行動が無くなったり未然に防ぐことができます.
(※マーキング...あらゆる場所に少量の尿をかけて自分の匂いを付け、
周囲に自分のテリトリーを知らしめたり、存在を誇示したりする行為)
● 理想的な手術時期はいつでしょうか?
生後約4ヶ月から6ヶ月までの間が非常に理想的と思われます.
初回発情がくる前に手術をされることをお勧めします.
「一度出産させてから手術したほうが良い.」というようなことを耳にしますが、
性ホルモンの分泌が活発にならないうちに摘出したほうが体に対する影響が少なくて済むということや、
乳ガンが予防できる確立を考えると早いに越したことはありません.
生まれて初めての発情は個体差がありますが、だいたい生後6ヶ月から8ヶ月くらいで起こります.
しかもある程度卵巣や子宮が発達してきている頃となると、
手術に適した時期というのは、生後4ヶ月くらいから6ヶ月ということになります.
大事なことは、病気を予防するという目的もあるということ.
初回の発情が起こる前に卵巣・子宮を摘出すると、
「悪性の乳腺腫瘍(乳ガン)の発生が非常に高い確率で抑えられる.」というデータが認められています.
そういったことがわかっているので、将来子供を生ませるかどうかをご家族のみなさんで
早い時期に相談しあって決めてあげると良いと思います.
ただ現実的には本人がまだ幼くて可愛い時期なので、相談をしようと思っているうちに適期が過ぎてしまう
ということが十分ありえます. 特に猫よりも犬で多く見られるような気がします.
それともう一つ.最近はあまり聞かなくなりましたが、
手術をすることによって寿命が短くなるのでは?というご心配.
避妊手術は病気の予防につながる手術です. 寿命が短くなることはありません.
現に手術をしている子のほうが、統計的には半年寿命が延びているという報告があります.
手術の手技や術後管理の面から考えてみましょう.
適期といわれる時期の子宮は成熟した子宮または出産経験のある子宮に比べて細いので、
それを摘出する為メスを入れる皮膚の切開部分が小さくて済みます.
また、傷口が小さければ当然体に対する影響も少ないですし、
抜糸までの術後管理もそれほど神経を使う必要がありません.
● 出産後どのくらいで手術可能になるのでしょうか?
できれば1ヶ月はおいた方がよいでしょう.
もちろんすぐにも手術は可能です. ただ、出産直後の子宮は非常にもろくなっています.
摘出の際、切れてしまうのを防ぐために皮膚の切開部分が大きくなる可能性があります.
また授乳中であればなおさらです. 子供達が離乳するくらいまでそっとしておいてあげましょう.
とはいうものの、各家庭でご事情があるというものです.
主治医の先生とよくご相談されて時期を決めてあげるとよいと思います.
● 妊娠中の手術は可能なのでしょうか?
可能です.
こういうご相談を持ちかけていらっしゃる飼い主さんは、ふいをつかれた妊娠に悩んでいる場合が多いです.
たいがいは、「子供はいらないんです...」とおっしゃいます.
人間のような中絶はできませんので、胎児が入ったまま一緒に子宮と卵巣を摘出することになります.
普通の体の状態とは違う状況での手術となりますから、十分注意が必要です.
避妊手術の予約をされる場合には必ずその旨を告げ、病院の指示に従って下さい.
● 開腹手術をしない避妊方法はありますか?
@ インプラント法による避妊
この方法は、カプセル状になった"発情抑制剤"を皮膚の下に埋め込むことにより、
発情を抑えてしまうというものです. 外してしまえば1〜8ヶ月後には発情が戻り、
妊娠可能な状態に戻すことができるので、将来繁殖させる予定のある子には有用な方法です.
数センチ皮膚を切開するだけの簡単な手術(処置)で済みます.
A ホルモン剤の注射による避妊
数回に渡ってホルモン注射をすることにより、発情を抑制します.
※ インプラントも注射も、それによる副作用が起こる可能性があります.
主治医とよく相談してください.
● 私達はこのように考えています
避妊手術に関してご理解頂けましたでしょうか?
さらに詳しいこと、例えば「入院はするのか?」とか「抜糸は何日目か?」といったような事は、
各病院で異なります.
最寄りの病院へ直接お尋ねになった方がよいでしょう.
また時折、「避妊手術をしているのですが、発情しているみたいなんです.」と言って
病院に訪れる飼い主さんがいらっしゃいます.
他の病院で行われた手術なので私達はどう説明したらよいのかわかりませんが、
子宮だけ摘出し、卵巣は残しているのかもしれません.
これだと妊娠は防げますが、発情は起こってしまいます.
せっかく避妊手術をしたのにも関わらず、
飼い主さんにとっては思いも寄らぬ"発情"という煩わしさが残ってしまいました.
また避妊手術をしたのに、子宮蓄膿症になってしまった...
これは先程とは逆に、卵巣割去と呼ばれる卵巣だけを取り除く手術をしたためです.
このようなことを防ぐ為には飼い主さんがしっかりと事前に手術の説明を聞くことです.
具体的にどのような手術をするのか知っておく必要があると思います.
避妊、去勢手術の考え方に関して、"個人的な意見です"が書きたいことはたくさんあります.
都会よりも自然環境の良い土地では、まだまだ捨てられてしまう命が後を絶ちません.
驚く無かれ、「子供の情操教育に愛犬の出産を見せ、その後、
子犬は目の見えないうちに海に捨てる.」と真顔でおっしゃった方がいます.
開いた口が閉まりませんでしたが、いったい何が情操教育なのでしょうか?
その方とは暫くお話をしましたが、やはりご自分の育った環境に影響され、
大人になってもそれが「あたりまえの行為」として、何の違和感も感じないのだ
ということがわかりました.
その頃の社会が、その土地の生活環境がそうさせてしまったわけです.
「自然のままがいい. 避妊、去勢なんて、人間のエゴだ!」と言われる方もいらっしゃいます.
では私はお聞きしたい.
人が動物の自由を束縛して"飼う"ということは、果たして"自然"なことなのか.
望まれない子を捨てるということは、"自然な行為"なのか.
動物が、「飼われる」という形で人間と共存していく上ではいろいろな制約があります.
彼らの"自然な本能である生殖行動"に対する制限により、
どれだけ肉体的、心理的ストレスがかかっているか、考えたことはありますか?
"野生"でない以上、そういった責任(病気の予防に関してもです)は
全て飼い主が負わなければならないのです.
皆さんがこのことを真剣に考え対処して下さることによって、
少しずつ周囲の意識も変わっていくと思います.
人と動物がお互いにいい関係を保ちながら共存していけるよう、
これからも皆さんと一緒に考えていきたいと思っております.